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岡倉覚三「日本美術史」現代語試訳 天平時代(その1)

いよいよ奈良時代のピークといえる天平時代に入る。この時代は、前の二つの時代、つまり、推古時代、天智時代の勢いを受けて、それを一層の高みへ到達させたもので、この時代には、ことさらに朝鮮や中国、インド・ギリシァ風の影響は認められない。推古時代に築かれた作風がますます「精巧」となり、天智時代に入って来た「新風」(外国の作風)が日本化されて一つの「進歩」をみせる時代である。その展開ぶりは、ちょうど中国唐時 […]

岡倉覚三「日本美術史」現代語試訳 天智時代

とくにこの時代を設定する必要はないと主張する人もいる。しかし、私はこの時代は必要だと思っている。その理由は、天智時代という時代の美術は、単に推古時代の美術の発展した姿というだけではすまされないところがあるからである。 細部にわたって研究すれば、この時代にしかない一種独特の性格が天智時代にはある。法隆寺金堂の壁画と、この壁画に囲まれている仏像とを比べてみるだけでもいい、その様式・雰囲気など全く別の種 […]

岡倉覚三「日本美術史」現代語試訳 推古時代 (その2)

さて、六朝の時代に美術がめざましい展開をみせたのは、奨励の方法が当を得ていたからである。圧制によって美術を奨励するというのは、決してほめられることではないが、社会がじゅうぶん発達していない時代にあっては、それが「良法」(効果的な手段)となることがある。さらに、もう一つの要因がそこに重なっている。それは、鑑識の議論が盛んに行われたことである。 六朝以前の画論は、かんたんなものしかなかった。さきに紹介 […]

岡倉覚三「日本美術史」現代語試訳 推古時代 (その1)

すでに述べたように、推古以前の時代、日本文化の基礎をつくったのは、太古大和民族の自然な勢いによってだったが、推古時代に入ると、急激に文学美術は華やかさを増してくる。そして、その活発な活動を実現させたのは、ほかならぬ外国との交流である。日本人はもともとから優美な性質を持っている人種だったが、外国との交通が活発になる以前は、素朴で淡泊な境遇を作っていた。応神天皇(5世紀前半の天皇)の頃から外国の工芸の […]

岡倉覚三「日本美術史」現代語試訳 推古以前

どこの国でも、美術の始まりは太古の時代にある。日本だけが、そうだとはいえない。美を好むという感情は、人間の本性で、未開の国には未開の国としての共通の特性がある。アフリカやオーストラリア、アメリカ大陸の未開地域から出てくる器物などは、一定の共通した形状、紋様があり、人類学者の中には、人類の起源は一つだという説を唱える者もいるほどだ。その説は少し極端だと思うが、人類はいつごろから美術というものを作るよ […]

岡倉覚三「日本美術史」現代語試訳 序論

世間では、歴史というものは過去の出来事を集めた記録である、だから、それは死物の集積にすぎない、と考える人が多い。しかし、これは、大きな間違いである。歴史というものは、われわれのこの身体の中に生き、活動しているものなのである。昔の人が泣いたり笑ったりしたことは、現在のわれわれが泣いたり笑ったりする、その源泉となっている。昔の人があんなふうに、あんなことで泣き、笑いしたから、いまのわれわれも、こんなこ […]

岡倉覚三「日本美術史」を読む 第一回 2008.6.6,14

はじめに 6月から15回にわたって岡倉覚三「日本美術史」講義の現代語訳(未定稿)を作っていこうというわけですが、この講義は明治23、24、25年の三年にわたって(一年単位で)「美学及美術史」という科目名の下に行われたものです。現在のところ岡倉自身の自筆ノートやメモは全く遺っていない。以下に整理しましたように、学生たちの筆記録がいくつか伝わっているだけです。「日本美術史」というタイトルも、岡倉自身は […]

異時同図法をめぐって その二

前回は、ヨーロッパ絵画の「異時同図法」を眺めましたが、「異時同図法」を《一枚の画面の中に登場する人物が二度三度描かれ、その人物の行動の時間の経過(物語)が描かれていること》と定義すると、聖エカテリーニ礼拝堂やパナギア・アシヌウ聖堂、ジョットーのスクロヴェーニ礼拝堂に描かれている一連の「ラザロの復活」の絵は、厳密な意味で「異時同図法」を完成させているとはいえない、むしろ、それは、ジョットーの後の世代 […]

異時同図法をめぐって その一

今回と次回のテーマはレジュメにありますように、「異時同図法」をめぐってです。これは、別の言いかたをすると、人類は「時間」「時」をどのように描いたかということを考えてみよう、ということです。 「異時同図法」という用語は、いつころからかよく調べてはいないんですが、日本美術史の世界で使われだした用語です。ボクが手元に持っているのは、ちょっと古い1980年代の辞書なんですが、ヨーロッパの辞書にもこの用語は […]

Z 張彦遠

〈土曜の午後のABC〉も、今日で第一期の最終回です。Zの回ですが、Zは、当初の予定通り〈張彦遠〉。その主著『歴代名画記』を取り上げたいと思います。今日のサブテーマをつぎのように出して、話を進めていければと願っています。 『歴代名画記』──作品のない美術史あるいは、作品がみられない/作品で実証できない美術史 こういういいかたをすると、そんな美術史は成立しえないのではないか、美術史というのは作品があっ […]