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異時同図法をめぐって その二

前回は、ヨーロッパ絵画の「異時同図法」を眺めましたが、「異時同図法」を《一枚の画面の中に登場する人物が二度三度描かれ、その人物の行動の時間の経過(物語)が描かれていること》と定義すると、聖エカテリーニ礼拝堂やパナギア・アシヌウ聖堂、ジョットーのスクロヴェーニ礼拝堂に描かれている一連の「ラザロの復活」の絵は、厳密な意味で「異時同図法」を完成させているとはいえない、むしろ、それは、ジョットーの後の世代 […]

異時同図法をめぐって その一

今回と次回のテーマはレジュメにありますように、「異時同図法」をめぐってです。これは、別の言いかたをすると、人類は「時間」「時」をどのように描いたかということを考えてみよう、ということです。 「異時同図法」という用語は、いつころからかよく調べてはいないんですが、日本美術史の世界で使われだした用語です。ボクが手元に持っているのは、ちょっと古い1980年代の辞書なんですが、ヨーロッパの辞書にもこの用語は […]

Z 張彦遠

〈土曜の午後のABC〉も、今日で第一期の最終回です。Zの回ですが、Zは、当初の予定通り〈張彦遠〉。その主著『歴代名画記』を取り上げたいと思います。今日のサブテーマをつぎのように出して、話を進めていければと願っています。 『歴代名画記』──作品のない美術史あるいは、作品がみられない/作品で実証できない美術史 こういういいかたをすると、そんな美術史は成立しえないのではないか、美術史というのは作品があっ […]

Y 尹東柱

1 ユン・ドンジュ(尹東柱)は、朝鮮半島が日本の植民地になっていた最後の時代を生きた詩人です。 彼自身は朝鮮の解放をその眼で確かめることなく、福岡刑務所で獄死しました。治安維持法第五条違反の罪で、懲役2年の刑をいいわたされ、服役中に亡くなったのでした。日本の官憲に殺されたも同然の死にかたでした。 彼が生まれたのは1917年11月、現在は中国国内になる北朝鮮の北方、当時の呼びかたで間島(カンド)省、 […]

X ザヴィエル

今回は24回目、《X》 です。当初 A to Z ということでXの項にはクセノポン(Xenophon)を用意していたのですが、じつはクセノポンとして知られる人物は二人います。一人は、ソクラテスの弟子だと伝えられている歴史家というか文筆家のクセノポン(430B.C.頃。生没年もはっきりしない)。もう一人はエペソスのクセノポンと呼ばれ、彼もまた生没年不詳、10世紀の『スーダ』という辞典風の本に「小アジ […]

W シモーヌ・ヴェイユ

≪第一部≫ 1 シモーヌ・ヴェイユ。人名辞典などを引くと「フランスの女性哲学者」なんて説明がされているはずです。しかし、「女性」はともかく、彼女が「哲学者」と呼ばれるような仕事を遺したことが判るのは、彼女が亡くなってから1947年に最初の遺著(『重力と恩寵』)が出版されて以降のことです。最初に刊行された『重力と恩寵』は、彼女の晩年のノートで、カトリック教徒としての信条や考えが誌されています。シモー […]

V ヴァン・ゴッホ

1 ブログのinformationに、去年はゴッホについて朝日新聞とBTに書きましたなんていいましたが、今年も『司馬遼太郎の街道をゆく』(朝日新聞社))のオランダ篇でゴッホを書いていました。 BTでは、「思想を表現する絵画」、これはゴッホ自身の言葉ですけど、そういう絵画としてとらえることの重要さを説いています。そのこと自体大切なんですが、ただ「思想」といったって、具体的にどんな、なにについてのどう […]

U 浮世又兵衛

1 「浮世又兵衛」、「憂世又兵衛」ともいわれた「岩佐又兵衛」を、Iの項目として扱わないでUに置いたのは、訳があるんです。Iに置いたのなら単純です。Uに置くことによって「岩佐又兵衛」の複雑な巾の広い姿が見えてくるという考えです。 岩佐又兵衛の代表作はなんでしょう、といって「これ」って一作だけ挙げて答えられる人はいないでしょう。最近、MOA美術館にある「山中常盤物語絵巻」が映像化され、神保町の岩波ホー […]

T 敦煌莫高窟

1 敦煌莫高窟は、敦煌という街(現在は「敦煌市」)はずれ、街から東南方向25km程離れたところにあります。南北に流れる大泉河という川があって、その川際に絶壁がそそり立っている。その絶壁に何百という石窟が穿たれ石窟寺院が建設されています、それが莫高窟です。(敦煌の街とは大泉川でつながっています。) 絶壁の上(莫高窟からいえば尾根に当るところ)から西へ、シルクロードの砂漠が始まります。小さい白い砂の砂 […]

S 坂口安吾

坂口安吾(1906.10.20−1955.2.17)といえば「日本文化私観」「堕落論」といったエッセイがまず頭に浮かぶ。  坂口安吾ってどんな人と尋かれればおおかたは「小説家」と答え、しかしその代表作はと尋かれると「桜の森の満開の下」ぐらいか。初期の「風博士」とかを挙げる人はちょっとひねくれもの、安吾文学の全体を観ないで自分の好みで挙げてるなって印象が強いし、「安吾捕物帖」とか「白痴」と […]