年の暮れに、

「時代」は、われわれを取り囲む「風景」のようなものだ。

いつも見ているはずなのに、よく見ていない現実の風景。そして、ときおり心の奥にひそんでいる記憶を目覚めさせる懐かしい「風景」。─「風景」はこの二つの層から成立っていて、われわれは、この「風景」の作る場で、生きるしかない。

それにしても、われわれは、その「風景」を日頃はとても粗末に扱い、見ている。その細部を詳しく説明描写してみろといわれてすぐ出来る人は、まずいない(そういうことを仕事にしている人を除いては)。

そこで、正月なぞがやってくると、部屋を掃除して机の上を清めて、少し「風景」への思いを新しくし、「時代」を迎えようとするのだろう。

(人間の愚かさと愛しさを感じる振舞いではある。)

2010.12.24