絵(イメージ)を書く — 絵画(タブロー)を言葉にする

10月10日の<⼟曜の午後のABC>のタイトルは
「絵(イメージ)を書く — 絵画(タブロー)を言葉にする」
とでもしましょうか。フランスの小説家マルセル・プルースト(1871〜1922)の『失われた時を求めて』から、ある絵画作品の描写を抜粋、読んでみることにします。『失われた時を求めて』の日本語訳はたくさん出版されていますが(文庫本でも4種類!)、ここは、ボクが自分で訳してみました。

彼、プルーストが語っているその絵の、作品の作者は誰か、判らない。克明な作品描写(言葉)から、これが誰のどの作品か言い当てようと、研究家たちは一生懸命調べてきましたが、これだというのは出てきません。しかし、そんな努力を知らぬ気に、この文章は、「ある」作品の姿を言葉で描き尽くしていると言ってもいいほど、書き込んでいます。
絵模様を文章にしてみせる小説としては、樋口一葉の「うもれ木」、幸田露伴の「観画談」など、すぐに思い浮かびますが、プルーストのは格別濃厚です。アルチザンの一品料理のような味わいの文章を楽しんでみましょう。

われわれは、絵を観れば、その感動を(あるいは不満を)誰かに(あるいはもう一人の自分に)伝えようとします。
それを伝えるのは「言葉」です。
このプルーストの言葉が、そんなわれわれの言葉に栄養と刺激を与えてくれることを願って、読んでみたいと思います。