⾃宅流刑通信(4)

どうやら、「⾃宅流刑通信」もこれで最終回になりそうです。
この「流刑」期間中、運動不⾜にならないように、⼀⽇に⼆時間か三時間、⼈通りの少ない裏道を散策するよう努めてきたのですが、⽬的もなく通り過ぎるのを⽬的としてぶらついているうちに、道端に⽣える草ぐさと挨拶を交わすようになってきました。誰に頼まれたわけでもないのに、道端に咲く草ぐさも、⾃分の咲くべき時を⼼得、花をつけています。
ある⽇、⻄洋蒲公英(たんぽぽ)が、⾒事な綿⽑をつけているのを⾒つけ、それ以来、綿⽑と出会うとiPhone でパチリと、それを挨拶にする三ヶ⽉。そのことを、『⼋雁』の次回の原稿にして送ったのが⼀昨⽇。翌⽇、いつもと同じように、裏道へ向かうと、驚くではありませんか。道端の雑草はことごとく刈り取られているのでした。
暗然、としました。
これは、辻斬りです。
こんかいの『⼋雁』の原稿は、予定より早く、急に綿⽑のことを書こうと思い⽴って書いたのですが、なんだか、蒲公英や野芥⼦の悲鳴が、「明⽇殺られる」という声が聞こえたのか。
その原稿、辻斬りにあった野の草の追悼になってしまいました。
その原稿、いますぐ(追悼ならなおさら)みなさんに読んでもらいたいのですが、⼀ヶ⽉後『⼋雁』に掲載されるまで待ってください。
三⽉末から毎⽇のように撮り続けた「綿⽑」の写真は、じつは、instagram に⽇記のように投稿してきました。お時間があれば写真と伴わせて⾒て下さい。

無残に刈り取られた草花ですが、とんなに刈り取られても、地下茎は⽣き延び、地中に残された種⼦は、芽を出して、まもなく、きっとみなさんに『⼋雁』 の原稿を読んでもられるころには、無残な裏道に緑の⾹りを拡げてくれるにちがいありません。

2020年5月28日
木下長宏