美は変容する

古くから伝わる作品を国宝や重要文化財に指定しようというのは(そのさいなぜランク付けするのか大きな問題だが)、自然災害のほかに、美に対する無知な暴力から護りたいという考えもあったにちがいない。

しかし、国宝に指定された作品は、権威に規制されたまなざしでその作品を鑑賞すればいいという安心感を与えてしまう。作品が変質するのを病的に怖れるのも、変容する美を見つける眼を持てない自信のなさの現れか。

どんなに大切に扱っても、時とともに美は変容するものである。変容していく姿のなかから新しい美を見つける力は、その作品に向う一人ひとりが、養っていかなければならない。

地震と津波と原発事故で完全に荒れ果てた東北の海辺の風景をみつめながら、ここがこれから長い時間かけて新しい生きた姿をとりもどすことを祈りつつ、変容のなかから美を見つけ出す力の大切さをしみじみ思った。

2011.6.24