マネをみた帰り道

「人工」と「自然」という区別をなにげなく使っているが、この区別ほどいいかげんなものはない。「自然」だと思っているものも、そのほとんどは「人工」によって作られているものだ。色、味、匂い……すべてそうだ。

いま、大切なのは、「自然」を取り戻すことではなく、「人工」的なものの色や、味や、匂いをようく見分け、嗅ぎ別ける能力を研ぎすますことではないか。

──マネの絵を三菱一号館でみながら、そんなことを考えた。マネは「人工」的な色彩、イメージ(画像や視像)、触感さえもがどんなものであるかを、絵という場面で徹底して追究した画家だ。その意味で稀にみる絵の達人だった。

2010.5.25