12月10日の皆既月食を見ていて、気づいたことがある。日頃見ている月は、「まぁるい、まぁるい、まん円い」などというが、この円さは、鏡のように平べったい。
ところが、月が完全に地球の影のなかに入ったとき、月の姿は、いつもより、はるかに立体的で、球として現われて見えた。これが月の実像だと言い切るのはためらわれるが、少なくとも、影のなかにいるとき、月は、太陽の光に照らされて見えている月とはちがう姿を見せてくれた。もちろん、望遠鏡で細部を拡大して見ているときには、想像もできない姿である。
美術品も同じことが言えるのではないか。美術館で煌々と照明器具の光のもとに晒されていては、その作品はとても平べったくなって見えている。光の当らないときに現す奥深さは、殺されている。拡大して、細部をしげしげと見ても、全体像は近づいてこない。
2011.12.10