夏の夜は蠍座と始まる

「さそり座」といえば10月末から11月に生まれた人の誕生星座をまず思い浮かべる。本当は、夏の星座だ。太陽が沈んで夜が始まったころ、南の空低く地平線を這うように登場して、広い夜空を仰ぎながら消えていく。

日本列島から眺めると地を這っていて、いかにも「さそり」らしいが、でも昔の日本列島人はこの星座を「魚釣り星」とか「鯖売り星」とか、「籠担ぎ星」「商人星(あきんどぼし)」などと呼んでいた。「赤星」ともいい、「さそり」の心臓部の「アンターレス」を指して言ったのだろう。

星に名前をつけてみんなで呼び合うという慣いを、もういちど取り戻したい。──現代(いま)は、そう願いながら星空を眺めるしかない。

2010.8.7