essay
笑いを忘れたカナリアは……
現代人は、昔の人のように笑わなくなった。笑いかたも変ってしまった。 展覧会などに行っても、「福富草子」の前で、誰も笑っていない(ボクも笑わない)。 「鳥獣戯画」だって、まずは笑うのが目的の絵ではなかったか。「笑いの本願」で柳田國男もいっているような、昔の人の高笑いはできないにしても、昔の人はこれをみて大笑いをしていたんだということを知り直し、もう少しボクたちの暮しのなかに「笑い」を復活させたいと思 […]
コスモスを眺めながら
コスモスの花は、一本だけ手にとってみても、どこか凛々しく可憐である。それが堤などにいっぱい咲いているのをみると、思わず息を呑む。風に逆らわないように揺れる、その揺れかたは、一本一本独特な揺れかたをみせ、自立して生きるということはどういうことかを教えてくれているかのようだ。 人間はちっぽけな有限な存在だが、そうであることを知れば知るほど、無限な世界に包まれていたい、無限な存在と和解し合っていたい、と […]
夏の夜は蠍座と始まる
「さそり座」といえば10月末から11月に生まれた人の誕生星座をまず思い浮かべる。本当は、夏の星座だ。太陽が沈んで夜が始まったころ、南の空低く地平線を這うように登場して、広い夜空を仰ぎながら消えていく。 日本列島から眺めると地を這っていて、いかにも「さそり」らしいが、でも昔の日本列島人はこの星座を「魚釣り星」とか「鯖売り星」とか、「籠担ぎ星」「商人星(あきんどぼし)」などと呼んでいた。「赤星」ともい […]
インスタントラーメン
ボクの10代のころは、インスタント食品が出回りだしたころだった。インスタントジュースとインスタントラーメン。これらは、現在の過剰なアレルギー症候群の重大な原因となっていると思うが、ボクの成長期を支えた食物だったことは、否定できない。チキンラーメンに卵をのっけて熱い湯をそそぐと絶品のラーメンができた。いまでも、店の棚にチキンラーメンをみつけるとつい買って帰りたくなる。 塩ラーメンにトマトを煮込むと、 […]
「抗菌」のいかがわしさ
文房具にまで「抗菌」とか「除菌」とか記してあるのをみつけて、吃驚した。 そんなに無菌状態になってどうするんだ。「抗菌」だったら清潔で健康な生活が保証できるというのは、人間の身勝手な欲望である。いつも、雑菌となかよく上手につきあっていくことこそ必要だし、それがいちばん「人間的」な生きかただと思うのだが…… 2010.3.10